鑑賞ノート『トゥルーコスト~ファストファッション真の代償~』
私たち人類は服によって自分を表現してきた。
しかし、現代の私たちの身に付ける服は、
本当に私たちに相応しい作られ方をしているだろうか?
映画のダイジェスト
①ファストファッションの何が問題なのか?
アメリカ
1960年代まで服の自給率は97%だった。今では3%に。
「低価格×ファッション」を武器に台頭したアパレルブランド
ZARA、UNIQLO、H&M、ZARA・・・
こうした企業が何をしているのか?
グローバル化の製造システム
・アウトソーシングによる限りないコストカット
・途上国にコストを競わせ、製造拠点を自由に選べる
そして、本当のコストは下がっていない。
大企業の利益を追求するシステム、
一握りの利益のために大勢の基本的人権を侵害、環境を破壊している。
具体例)
バングラデシュでの縫製工場崩落事件(ラナプラザの事故)
労働者の日給は2ドル、労働組合も保険も年金もない労働者
この21世紀においても、他者の命を軽んじている。
雇用を生んでいるという“正義”を盾に、基本的人権すらも尊重していない。
具体例2)
カンボジアの皮革工場では化学薬品によって汚染された水が
そのまま農業用水・生活用水に流れていく。
クロミウム汚染によって
様々な皮膚病、90%の人が貧血に苦しんでいる地域がある。
②ファストファッション真の代償は原材料の生産にまで及んでいた
・綿花の80%が遺伝子組み換え
・ラウンドアップ(殺虫剤・残留性薬剤)による健康被害
・大規模で均一的なアプローチによる環境破壊
モンサントによる独占
・種子の独占
Btコットン(殺虫成分を持つ綿花)
・専用の肥料と専用の農薬
・そして、健康被害が出れば薬を売る
⇒インドの農民の悲劇
16年間で25万人以上の農業従事者が自殺、30人に一人の割合。
③物質主義とファストファッション
買えば幸せになれるという幻想(広告というプロパガンダ)
車のコマーシャル、シャンプーの広告も同じ。
消費することによって満たされるとメッセージを送るが、実際はそうではない。
ただ、それに気づかずに、次の消費へと向かう。
そして、本当に必要としているものは高額。
結果として、慰めの消費であるファストファッションへ走る。
④大量生産・大量廃棄が途上国に与える影響
世界では年間800億枚のTシャツが作られている
アメリカで捨てられる1100万トンの衣料品は200年以上も残る
それは製造の負担を途上国に転嫁するだけでなく、途上国の雇用を奪っている。
たくさんの服が途上国に送られ、その国の服飾産業は消えた。
⑤途上国からの言葉
バングラデッシュの縫製工場で出稼ぎをしている母親の言葉
「子どもには年数回しか出会えない」
「毎朝から晩まで厳しい労働環境でつくっている」
「その苦労を人々は知らない。ただ買って着るだけ」
「その服は私たちの血でできている。誰にも着てほしくない」
「子どもたちには同じ仕事をしてほしくない」
「いい教育を受けて、もっと良い仕事について幸せになってほしい」
多くの人を不幸にしているシステムを変えるべきだ。
参加者の感想
「農薬の制限がないからこそ、綿花の生産は怖い」
「昔は靴下が1000円だった。今、こんなに服が安いのに違和感を覚える」
「欲をどのように制御するか、非常に重要なテーマです」
「今のシステムまでも当たり前になっている、違和感」
「2人に1人がガンになる時代、それって当たり前なの!?」
「なぜ疑問を持たないのか?みんなで声を上げればできるのに」
「公害問題は過去のことと思っていたが、今も起こっている」
「先進国は自らの経験から改善策を知っているはずなのに・・・」
「一番深い映画だった」
「安い=搾取。買う=命を買う。」
「安く買えてよかった、お得。とは、思えなくなる」
「人権は全ての人が持っているもので、途上国だからといって無視して良いはずがない」
「ものづくりも、自然の一部。そのサイクルを見直す必要がある」
「子供たちと環境問題を勉強していると聞く言葉、人間がいなくなればいい」
「今の問題は、人間の持つ知恵、創造性、忍耐力によって変えていける」
「知ったものとしての責任を感じる」
上映を終えて…
先進国の生活様式、その一つであるファストファッション。
服ひとつ、これだけでも多大な迷惑を掛けているとは…
そして、環境に多くの負荷を掛けているとは…
先進国である日本にいる私たちは「環境問題」という課題を自ら作り出している。
そして、それらを「解決する」ことを考えているが、それは正しいアプローチなのだろうか?
前提が「(今の生活や価値観を変えずに)解決する」となっている限り、
その「解決」は決して本質的な解決とならないのではないか?
そもそも「課題が生まれない社会」の在り方を模索するべきではないのか?
これまで以上に環境問題の本質が見えた、そんな映画と交流会でした。
今を当たり前と思わないこと。
そして、知った者としての責任を果たしたいと思う。
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